『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』坂爪真吾(著)感想

書評

本書では、とある地方都市に住むシングルマザーに焦点を当て、彼女たちを取り巻く環境、家族、制度に潜む問題を浮き彫りにしています。

記事の最後には、生活していく上で困ったときに相談できる窓口をいくつか載せておきます(本書の中でも触れられている団体です)。

あらすじ

経済的困窮におかれたシングルマザーの中で、デリヘルなどの性風俗店で働く人たちが増えている。首都圏に比べて賃金も低い、働き口も少ない、行政の公的サービスも十分ではないという地方都市において、「性風俗シングルマザー」はどのように仕事と育児をこなし、貧困から脱出しようともがいているのか?地方都市で困難な状況に直面する彼女たちと社会福祉をつなげようと、性風俗店での無料法律相談を実施する著者が、現場の声を丹念に拾いつつ、単なるルポの枠を超えて、具体的な問題解決策まで提案する。

「BOOK」データベースより

感想

スマホを助産師代わりにして出産

子どもを身ごもった一人の女性。しかし、彼女は行政にも周囲の人にも助けを求めることができない。そんな彼女が選んだ道は、スマホで分娩の方法を調べ、ひとりで産むことでした。スマホを助産師の代わりとして活用したのです。

衝撃を受けました。

先進国と言われてきた日本の中で、想像を絶するような辛い状況に陥っている人々がいる。彼女たちの声を聞き、自分がいま、どれだけ恵まれた環境にいるかを思い知らされました。

世の中には、生活保護をはじめとした様々な制度が存在します

しかし、行政がセーフティーネットとしての制度をいくら充実させても、救えない人々がいます。

生活保護などの制度をそもそも知らない人。

制度を知っていても、心情的な理由から利用を拒む人。

申請しなければ制度の恩恵を受けられない。ゆえに、手を伸ばすべき人に救いの手を差し伸べられない。

それがこの国の現状なのです。

自己責任論は本当に正しいのか

児童扶養手当の拡充の話が出ると、「ただの甘え」「自分で離婚した人のために税金を使うなんてもってのほか」といった、シングルマザーに対する自己責任論が持ち上がります。

しかし、その意見は本当に正しいのでしょうか。

夫から暴力を受ける。

ギャンブルの借金を背負わされる。

そのような環境では、離婚しなければ生活が完全に破綻するのは時間の問題でしょう。離婚したというよりも、離婚せざるを得なかったと言うべきです。そんな彼女たちに対しても自己責任だと言うのは、どこか違和感をおぼえます。

そういった声ばかりが大きくなれば、日本の貧困はますます加速していくことでしょう。

とはいえ、税負担の増加や一向に上がらない低賃金を背景に、幸せを感じることが難しい現状では、他人のことまで気にかけろというのもなかなか難しい。

行政サービスの情報の入手方法、子どもを預けられる環境、従業員以外の労働形態の拡充などなど、複数の分野で連携して セーフティーネットを 作り上げていかなければ、改善は見込まれないでしょう。

セーフティーネットとしての風俗

大多数の人が、普通の仕事ではないとみなしている性風俗の仕事が、シングルマザーたちの拠り所となっていることにこの社会の歪さを感じます。

本来は行政などがその役割を担うべきです。それなのに、機能できていない。

行政も決してなにも手を打っていないわけではありません。しかし、支援を必要としている女性たちにそもそも届いていなかったり、財源や人材が限られているせいで、根本的な解決に繋げられないのだと思います。

豊かな国ほど、身体を売る人は少ないと言われています。

だとするならば、いまの日本はもはや貧困国でしょう。

相談窓口

シングルマザーサポート団体全国協議会

ひとり親家庭をサポートする全国ネットワーク

こちらの協議会では、育児に不安を抱えるシングルマザーの支援を目指す20以上もの団体が集まっています。

ホームページから、各地区の会員団体を調べることができます。

同じような境遇の仲間と出会うこともできますので、ひとりで抱えていた不安や悩みを吐き出せる場になることでしょう。

ホームページはこちら

一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク

思いがけない妊娠をしたときに相談できる、全国の妊娠相談窓口リストを見ることができます。

ほかにも、妊娠したけどお金がなくて病院にかかれない場合や子育てが困難である場合などに、どのようにすればいいか、どのような制度が利用できるかが紹介されています。

ホームページはこちら

風テラス

風俗ではたらく人のための無料生活・法律相談サービス

風俗店で働いている(働いていた)方であれば、どなたでも、全国どこからでも相談ができます。

費用は無料です。相談内容は、どんなささいなことでも問題ありません。

LINE・ツイッター・メール・お電話での相談も可能です。

風俗に近い業種・業態(リフレやエステ、交際クラブ・パパ活など)で働かれている方も相談できるとのこと。

ホームページはこちら

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