フリーゲーム夢現で『風と花曲のアンブレラ』というゲームをダウンロードした。花曲の読み方は、かきょく。
前にX(旧Twitter)で制作者様のポストを見かけて以来、ずっと気になっていた中編RPGだ。やろうやろうと思っていたら、いつの間にか配信開始から4ヶ月近くたっていた。
本作の主人公は、「風乗り」と呼ばれる英雄の末裔である貴族令嬢。あるとき彼女は風に運ばれてきた助けを求める声を耳にし、父親の制止を振り切って冒険の旅に出る。
RPGの王道を押さえつつ、風乗りなどオリジナル要素も多い。旅の先にどんな結末が待っているのか、非常に楽しみだ。さっそくプレイしていこう。
蝶のように舞い蜂のように刺す
物語は主人公の部屋からスタートする。彼女の名前はセシリー。ピアノやダンスをたしなむ、一見するとごく普通のお嬢様だ。かわいい。
しかし、風乗りだった母親に憧れている影響か、助けを求める声が聞こえるや否やすぐ邸宅を飛び出す決断力と行動力も持ち合わせている。
誰のものかもわからない声のために自ら危険に飛び込むなんて、そうそうできることではない。
風の声を聞いたセシリーは、純白の傘を手にして邸宅の窓から大空へと飛び立つ。そうして彼女は、おとぎ話の眠る北の地、ガーデニアにたどり着く。
ここからセシリーの長い冒険の旅が始まるわけだが、このお嬢様、とにかくマイペースというか肝が据わっている。
そんなこと言ってる場合じゃないよ! 目の前にいるのは魔物だよ!
ここはダンジョンだよ! お茶会を開くところじゃないよ!
ほら怒られた。
そんなセシリーだが、実は狩人・ロウが目を見張るほどの実力の持ち主である。戦闘での傘さばきは見事なもので、なんならパリィすら使いこなす。
傘にあるまじき小気味いい音を響かせながら敵の攻撃を受け流すたび、あの可憐な身体のどこにこんな技術が、と驚かずにはいられない。こちとら『エルデンリング』で散々パリィに失敗して殺されてばかりいるっていうのに。
風乗りを快く思っていない父親が訓練なんて認めるはずがないし、風乗りだった母親はすでに亡くなっている。つまり、いまのセシリーの動きは独力で学んだ可能性が高い。
狩人もびっくりする戦闘技術を持ち、魔物を前にしても一切怖気づくことなく、なんならドン引きさせてしまうこともあるほどの胆力を備えたお嬢様……
冷静に考えるとやべえヤツだな。
でも、そこがいい。
ドット絵が舞う華やかな戦闘
さて、RPGといえば、戦闘も重要なウェイトを占める。戦闘難易度がおかしいと、プレイヤーのやる気も下がってしまう。その点、『風と花曲のアンブレラ』はちょうどいい塩梅にまとまっていると感じた。
本作の戦闘はサイドビューのアクティブタイムバトル(ATB)を採用しており、行動ゲージがたまったキャラクターから行動できる。コマンドの選択中は時間が止まってくれるため、焦ってボタンを押し間違える心配はしなくていい。大変ありがたい仕様だ。
ボスが相手ともなるとさすがに歯ごたえのある戦いになるが、決して理不尽な難易度ではなく、装備を見直せばレベル上げに勤しまなくても充分勝てる。逆に言えば、準備が不足していると突破が難しい。このへんのバランスがよくとれている。
フィールドウィンド(FW)と呼ばれる特徴的なリソースの存在もおもしろい。FWをためるか消費するか。FWの数によって戦局が大きく変わることもあり、戦術の幅の広がりに貢献している。
そしてなにより魅力的なのが、ドット絵だ。
数あるフリーゲームの中からこの作品を選んだ理由のひとつでもある。
キャラクターがスキルを発動するたび、専用のドットモーションが表示される。キャラが生き生きと動き、見ていてあきない。特に好敵手との戦闘シーンは必見だ。
散りばめられたエレガントな表現
プレイし始めてみるとすぐにわかるが、このゲームでは制作者のこだわりをあちこちから感じ取ることができる。
たとえば、ゲームの操作方法についての表示。一般的なゲームであれば、「操作方法」と馬鹿正直に書かれているだろう。しかし、本作は違う。そんな無粋な表現はしない。
“冒険のレッスン”である。レッスン。なんて優雅な響きだろうか。
作品の雰囲気にあった言葉が選び抜かれている場面は、ほかにもある。
RPGといえば、街中や家の中のオブジェクトにアイテムが隠されていることが多い。そのためプレイヤーはあちこち調べ回るのが常だ。それについての本作におけるコメントがこちら。
“やたらと調べ回っては慌ただしく見えてしまいます。”
“旅先では煌めきを発するものを調べてごらんなさい。あなたの知恵や好奇心を満たすことでしょう。”
要するに「光ってる場所以外を調べてもなにもないよ」ということを言っているわけだが、表現がめちゃくちゃ優雅だ。
このように、システムメッセージ関連まで気品にあふれている。
最後に
クリアまでのプレイ時間は約10時間。クリア後の要素まで入れると、11時間となった。
探索、戦闘、ストーリー、どれをとっても非常にレベルが高い。今回紹介したおすすめポイントは、全体のほんの一部だ。紹介しきれなかった部分がまだまだたくさんある。
『風と花曲のアンブレラ』、おすすめです。シナリオ重視、キャラクター重視のRPGが好きな人は、ぜひ遊んでみてください。
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