Steamで『アビスシーカー 彼方より託されし秘宝』という無料ゲームをダウンロードした。
ぼくも愛用しているRPGツクールMZ製の作品だ。『RPGツクールフェス』で作られたゲームのリメイク版だが、オリジナル版はサービスが終了した関係でダウンロードすることができなくなっている。どこがどう変わったのか見比べてみたかったが……。
ジャンルはRPG。
Steamの説明によれば、記憶を失った青年と筋骨隆々の女冒険者が大迷宮を探索していくゲームのようだ。ダンジョン探索と聞くとハクスラ(戦闘メイン)を連想しがちだが、本作はストーリー重視らしい。想定プレイ時間は8時間前後。かなりコンパクトにまとまっている。ちょっと王道RPGに触れてみたいときにぴったりのゲームという印象だ。
さっそく遊んでいこう。
大冒険のはじまりだ!
おっ。ゲームを起動してみると、冒険者1人と子供2人が現れたぞ。どうやら大迷宮について説明をしてくれるらしい。なるほど会話形式か!
最初に世界観の説明がくることはゲームにありがちだが、ただ文章が延々と流れてくるだけのシーンを見ると「いや、そんなことよりはやくキャラクターを操作させてくれ」と思ってしまう。その点、『アビスシーカー』は3人の会話で進むから、だらけることなくスムーズに状況が飲み込める。子供に好かれた冒険者という、キャラクター描写を兼ねている点もうまい。こういったプレイヤーを楽しませる表現方法は、ゲーム制作に勤しむ者として見習いたいところだ。
子供たちとの雑談を終えると、今度はギルドの受付嬢が登場する。どうやら熟練冒険者のバルバラに依頼があるらしい。このあたりはいかにもRPGといった流れだ。
さて、冒険者ギルドに行けばストーリーが進むことは誰の目にも明らかだが、その前になすべきことがある。キャラクターを自由に動かせるようになってまずやることといえば、町の探索以外にないだろう。冒険者ギルド? そんなの後回しだ。
すべての町人に話しかけ、情報を収集し、落ちているアイテムを回収する。鍵のかかっていないドアがあれば、たとえそこが民家だろうが王城だろうがためらうことなく入っていく。これこそ由緒正しい冒険者の姿勢だ。鍵をかけていないほうが悪いのである。ちなみに今回の町には民家も王城もなかった。あるのは武具屋や宿屋といった冒険者用の施設ばかりだ。
町を歩いていると気になる場所をひとつ見つけた。墓地である。なぜかスペースが空いている。
これはどう考えても、制作者が意図的に配置しなかったのだろう。
「物語に登場した銃は必ず発砲されなければならない」といった趣旨の言葉を残した人がいるそうだが、ゲームにおいてもそれは同じだとぼくは考えている。あえて墓の数をひとつ減らしたのなら、そこには相応の理由があるべきだ。
単なる置忘れか、はたまた深い意味が隠されているのか。答えはこの先の冒険で明らかになるだろう。「スペースが空いていることに意味なんてありません。ただの雰囲気です」なんて結末にならないことを祈るばかりだ。
ひととおり町の探索を終えたので、ギルドの受付嬢と会話し、いよいよ大迷宮へと挑む。
本作はランダムエンカウント制となっており、迷宮を歩いていると突然モンスターが襲ってくる。
バトルはよくあるターン制だ。最初に味方の行動を選択し、素早さが高い順から技を繰り出す。攻めるか守るか、それとも回復か。臨機応変に行動を選んでいく必要はあるが、選択中は敵も律儀に攻撃の手を止めてくれるのでじっくり悩める。プレイヤーの技量に左右されないのがコマンドRPGのいいところだ。スマブラでろくにスマッシュ攻撃を決められないぼくには大変ありがたい。
最初にそうぐうした敵はスライム2体。なんか色が違うけど、能力にそれほど差はないだろう。「戦闘」コマンドを選んで……
!?
バルバラ姐さん、思った以上にムキムキだな! あと身体の傷がすごい! 攻撃は最大の防御を地で行く人だ! 一撃で敵を粉砕すれば防具なんて必要ないだろって思ってるタイプの人だ!
案の定、スライムを通常攻撃一回で粉砕。見た目どおりの実力の持ち主だった。
そんなこんなで迷宮を進んでいくと、ゴブリンに襲われている青年を発見。どうやら彼が本作の主人公らしい。刃物を構えたゴブリン相手に対話を試みるとは、まさしく主人公の器だ。
とはいえ話し合いに応じるような相手なわけがなく、結局、バルバラ姐さんの武力で黙らせることに。うーん、姐さん強い。そして青年が弱い。弱いというか弱すぎる。あっという間にHPバーがゼロになったぞ。きみは本当に主人公なのか?
あまりに打たれ弱すぎる青年だが、彼は一切の記憶を失っていた。自分は何者なのか。なぜ大迷宮にいるのか。なにひとつ思い出せないという。
さて困った。
かくして、謎の青年の記憶を取り戻すため、そして大迷宮に隠された秘密を解き明かすため、バルバラたちの長い冒険が始まるのだった……
箱庭に詰め込まれた魅力
それからひたすら遊び続け、ついにエンディングを迎えることができた。プレイ時間は9時間強。長いようで短い。そうか、彼らとの冒険ももう終わりか……
総評として、細部まで丁寧に作り込まれたゲームだと思った。
ダンジョンは広すぎず狭すぎず、ほどよい長さですっきりしている。主要な階層へ移動するファストトラベル機能も用意されており、ストレスは少なめ。
階層が変わるたびに、洞窟、森、海底など環境ががらりと変わるのもいい。本作のダンジョンはひとつだけだが、おかげで毎回新鮮な気持ちで探索できた。
サブイベントも豊富だ。
迷宮内にはメインストーリーとは関係のない強敵が複数待ち構えており、緊張感のあるバトルが楽しめる。攻撃一辺倒で勝てるわけでもなく、毎ターンHP回復や特定スキル無効化など、ボスごとにギミックをうまく突破する必要がある。倒せば強力な装備やスキルをゲットできるので、腕に自信があればぜひ戦っておきたい。
ほかにもやり込み要素が目白押しだ。
ときには冒険者ギルドからの依頼でケツの仇をとったり……
ときにはダンジョンに鎮座するドラゴンに挑んだり……
ときにはちょっと刺激の強いイベントも……?(ないです)
ひとつ注意点をあげるとすれば、時限イベントがあることだ。ストーリーを進めてしまうと、とあるイベントの進行フラグが消えてしまう。「どんな些細なイベントも見逃したくない!」という人は、大迷宮を隅々まで探索したほうがいい。ぼくはこれで泣きを見た。
ここまでいろいろ感想を語ってきたが、『アビスシーカー』の一番の魅力は、やはり個性豊かなキャラクターたちだろう。
腕はからきしなのに困った人を放っておけない記憶喪失の青年。
顔は怖いし筋肉もすごいけど面倒見のいい女冒険者バルバラ。
個人的に好きなキャラクターは、冒険の途中で出会うスケルトンだ。無駄にテンションが高いくせに、やたら強い。セリフもいちいちコミカルだ。骨のくせになんでこんなに元気なんだ?
あまり語りすぎるとネタバレになってしまうが、ほかにもまだまだ愉快なキャラクターたちが登場する。
二転三転するストーリー、胸躍る強敵との戦闘、愉快なキャラたちのかけ合いなど、RPGの魅力が存分に詰まった作品だ。無料でダウンロードできるので、あなたもぜひ遊んでみてください。
攻略情報はこちら▶【アビスシーカー 彼方より託されし秘宝】攻略メモ
コメント