どうも、ライムです。
今回、ご紹介するのは、私が学園ミステリの世界にはまるきっかけとなった一冊です。
それがこちら、米澤穂信氏の『氷菓』。
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実――。何事にも積極的には関わろうとしない”省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ、登場! 期待の新星、清冽なデビュー作‼
「BOOK」データベース より
2012年にはアニメ化がされ、そして2017年には実写映画化もされたので、ご存知の方も多いかと思います。もしかしたら、アニメから知ったよー、という方もいるかもしれませんね。
本との出会い「わたし、気になりました」
私がこの本と巡り合ったのは、偶然です。
たまたま近所の書店に行き、何気なく手に取ったのが、この『氷菓』でした。あらすじを見て、なんだかおもしろそうだなと思い、衝動買い。それまでは東野圭吾氏の作品をはじめとした、大人の世界を描いたミステリーばかりを読んでいたので、学園を舞台にした青春ミステリは初めてでした。
で、読んでみて、ずばりこれが当たりも当たり、大当たりだったわけです(もしかしたら、記憶が美化されすぎているのかもしれませんが、面白かったのは事実です笑)。
作品に登場する個性豊かなキャラクターたち。
バラエティに富んだ日常の謎と、バラバラの手掛かりから一つの真実を導き出す見事な解決パート。
そして、単なる知的ゲームで終わらず、謎解きを通じて主人公たちが成長していく姿。
当時、灰色の学校生活を送っていた僕にとって、仲間たちと一つの目的に向かって走る彼らの姿は、とてもまぶしく感じられましたね。
小説は私たちに、自分の見ている世界とはまったく異なる世界を見せてくれるから、読書はやめられません!
話が少しそれました笑
紹介に戻ります。
ミステリと青春の物語
『氷菓』の舞台となるのは、どこにでもありそうな地方の高校、神山高校です。
主な登場人物は、以下の4人となります。
「やらなくてもいいことなら、やらない。やるべきことは手短に」をモットーに掲げながらも、卓越した頭脳を持つホームズ、折木奉太郎。
「わたし、気になります」と詰め寄り、奉太郎を振り回す旧家の天然お嬢様、千反田える。
「データベースは結論を出せないんだ」を自論とし、巾着袋がトレードマークの似非粋人、福部里志。
「やっぱりあんた、ヘン」と七色の毒舌を繰り出す、アクは強いが常識人、伊原摩耶花。
作者の米澤穂信氏によると、上記4人は、かの有名なコナン・ドイル作「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場する人物の役割を意識して作られたとのことです。上から順に、ホームズ、依頼人、ワトソン、レストレード警部ですね。
この4人が所属するのが、古典部となります。
あらすじとしては、『氷菓』という題名の文集をめぐる謎に、いくつかの謎が有機的に絡まり、その小さな謎を解決していくことで、主軸となる『氷菓』の謎に迫る、という形になっています。連作短編集にちょっと似ているかもしれません。
ミステリですから、当然、伏線がいくつも出てきます。私は、ミステリ好きのくせに推理が苦手なものですから、あそこで登場したものがここにつながるのか! と何度も驚かされましたね笑
ミステリ要素以外にも、本作品では青春要素が色濃くあらわれています。
”高校生活といえば薔薇色、薔薇色といえば高校生活”という出だしから始まる本編では、灰色の高校生活を送る主人公・折木奉太郎が、なぜ千反田えるの悩みに向き合おうとしたのか、その心境の変化が、大変丁寧に描かれています。
ラスト間近で、奉太郎が旧友である里志に自分の心境を吐露するシーンは、ぐっときましたね。
殺人といったセンセーショナルな事件が起こらないため、ミステリ面では少しインパクトに欠ける部分もあったり、登場人物の言動が少ししっかりしすぎなのでは、と思う部分もありましたが、それを補ってあまりある魅力に詰まった作品でした。
この作品に早くから出会えたことは、運がよかったのでしょう笑
最後に
多感な少年少女の織り成す物語。そのすべてが輝いているわけではなく、ほんの少しダークな部分もあるけれど、それをぜんぶひっくるめて、青春なんだなと思います。
小説の設定はシンプルで、小難しい話もぜんぜん出てきません!
氷菓をはじめとした古典部シリーズは、現在6冊まで刊行されています。著者の米澤穂信先生曰く、奉太郎たちが卒業するまで続くということですので、彼らの甘く苦い青春物語はまだまだ楽しめそうですね。
活字ばかりを目で追うのは苦手だよ、という方は、アニメ化やコミック化もされていますので、そちらもチェックしてみてください。
謎解きの楽しみを味わいながら、懐かしい青春時代を振り返られる一冊として、興味のある方はぜひご一読を!
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