『わたし、二番目の彼女でいいから。』西条陽(著)感想

書評

お互い一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている二人。

背徳的で危険な香りに満ちたラブコメでした。

作者は西条陽にしじょうよう先生。第24回電撃小説大賞で金賞を受賞、『世界の果てのランダム・ウォーカー』でデビューした方です。

イラストはRe岳れたけ先生。表紙をめくった瞬間、目に飛び込んでくるカラーイラストがかなり扇情的で刺激的。

読み終えてまず思ったのが、とにかくやばい本に出会ってしまったな、ということ。昨今のラブコメってここまでこじれてるの!? と驚かされました。破壊力抜群。

爪痕をガッツリ残してくる一冊です。

作品情報
  • 出版社:株式会社KADOKAWA
  • レーベル:電撃文庫
  • 刊行月:2021年9月

あらすじ

「私も桐島くんのこと、二番目に好き」
俺と早坂さんは互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている。
確かに俺と早坂さんは恋人だ。一緒に帰って、こっそり逢って、人には言えないことをする。
それでも、二番目はやっぱり二番目だから、もし一番好きな人と両想いになれたときは、この関係は解消する。そんな約束をしていた。はずだったのに――
「ごめんね。私、バカだから、どんどん好きになっちゃうんだ」
お互いの一番好きな人と近づくことができたのに、俺たちはどんどん深みにはまって、歯止めがきかなくて、どうしても、お互いを手放せなくなって……。
もう取り返しがつかない、100%危険で不純で不健全な、爛れた恋の結末は。

『わたし、二番目の彼女でいいから。』カバー

主な登場人物

  • 桐島司郎(きりしましろう)……ミステリー研究部部長。眼鏡。A型。橘が一番好きだけど、二番目に好きな早坂と付き合っている。橘と彼氏のやりとりをSNS越しに見ては苦しむという屈折した人物
  • 早坂あかね(はやさかあかね)……桐島の彼女。学校の男子からは清純だと思われているが、桐島には違った一面を見せる。別の学校の先輩ことが一番好き。牧曰く、品質のいい日本車タイプ
  • 橘ひかり(たちばなひかり)……彼氏持ち。無口で無表情がデフォルト。彼氏にすら体を触らせなかったが、桐島にだけ無防備な姿を見せる。牧曰く、スポーツカータイプ
  • 牧翔太(まきしょうた)……生徒会長。そつなく仕事をこなす。英語教師と付き合っている
  • 酒井文(さかいあや)……早坂の友人。ショートカットで眼鏡をかけ、一見すると地味な生徒

感想

背徳的な恋愛

桐島と早坂は、お互いのことが二番目に好き。

本当は一番好きな人がそれぞれいるけれど、妥協した結果として、一番と付き合えなかったときの保険として、桐島と早坂は二番目同士で付き合っている。もしどちらかが一番好きな人と両想いになれたらこの関係は解消する、そんなルールを設けて。

この時点でけっこうこじれた関係が垣間見えます。なんというか、無事に何事もなく過ごせる要素がどこにも見当たらない。絶対なにか起こるでしょ、という予感がひしひしと伝わってきます。

好きな気持ちはコントロールできない。一目惚れするパターンもあれば、付き合っているうちにだんだん好きになるパターンもある。人それぞれ。だからこそ、二番目同士で付き合って丸く収まったみたいに思えても、変化が生じることはあるわけで――。

これまでに読んだことのないタイプの恋愛模様。不健全で不純な物語に最初は面食らいましたが、読み進めるうち、このドロドロ感にどんどんハマってしまいました。

ラブコメ含め恋愛を題材にした物語って、一番好きな人の一番になれるように努力をしていくのが基本だと思います。本書のような、当たって砕けるよりも前に、二番目に好きだからという理由で本命ではない異性と付き合う展開というのはなかなか珍しい。しかも、付き合っている相手がいながら、本命の相手へのアプローチは忘れません。効率的といえば効率的ですが、首を傾げたくなる点もあるわけで。

恋愛に対しては誠実であれ、というのが信条の人にとっては少し受け入れ難いかもしれない、世間の常識からは考えられないような関係。ただ、世間の常識というのはしょせん多数派の意見というだけであり、真理の如く正しいわけではありません。結婚して夫婦になったならともかく、あくまで恋愛は自由です。当事者同士の問題に過ぎません。

まあ、そんな当事者同士の問題に首を突っ込んで口を挟みたくなるのが、人間なんですけど。

型にとらわれないからこそ、取り返しがつかないほど歪んでしまう。

底なし沼にはまっていく桐島たちが、はたしてどのような選択をしていくのか。

先が気になって仕方がない。まさかこんな恋愛モノを目にする日が来るとは! 最後までドキドキしっぱなしでした。

衝撃度120%のラブコメ、ここに爆誕です。

桐島が二番目に好きな早坂、桐島が一番目に好きな橘

本書には二人のヒロインが登場しますが、これがどちらも可愛い。

桐島と付き合ううちに、気持ちが暴走していく早坂。

彼氏がいるにもかかわらず、桐島に近づこうとする橘。

正反対の魅力を備えた二人が己の武器を生かしてスキンシップをエスカレートしていく様が生々しく描かれ、あまりに蠱惑的で見入ってしまいました。

耳の輪郭をなぞる舌、腕に押し付けられた肌の体温、口に触れて湿ったクラッカー。

理性がとろけ、情欲に塗りつぶされてしまいそうになる甘美な触れ合い。

いまのラブコメってここまで攻めるんだ……。

男女が仲良くなるためのゲームシーンは、どれも強烈。とりわけ、耳元ミステリーのくだりがガッツリ印象に残っています。

肥大化する思いに押されヤンデレ気味な早坂と、泰然とした態度で迎え撃つ橘。良くも悪くもめんどくさい。ただ、そんな一面もまた魅力的なわけで。

最後に

一番の好きと二番の好きはなにが違う?

不健全だけれど、どこか人間味も感じられる恋愛模様。

主人公が複数の女の子から好意を寄せられるというラブコメの常道を守りつつ、既存作とは明確な違いを打ち出してきた作品でした。

狂っていく彼らの関係にゾクっとします。

風雲急を告げるラストの展開には言葉を失うほかありませんでした。

この先どうなるの!? 最後のイラストが意味するものって!?

この恋の行く末を見届けるためにも、近冬発売の2巻が待ちきれません。


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