冷たい水を飲むたびに奥歯がしみる。ミニトマトを食べるたびに奥歯が痛む。
痛いなー、痛いなー、でもきっと気のせいだよなー、ただの知覚過敏だよなー、と誤魔化し続け、気づいたら1年ぐらい経ってた。
その間、痛みは一向に治らん。
これもうあかんやつや、と思い、現実と向き合うために仕方なくネットを開く。
検索ワード、「虫歯 放置」。
ネットの答え、「歯が失われます」「歯を支える骨が壊れます」。
こえええ!
失った歯は二度と取り戻せないとかこんなん言われたらびびるでしょ。
歯医者に行くのは嫌だけど、歯が欠けて間抜け面になるのも嫌すぎる。
ということで、覚悟を決めました。一週間ぐらいかけて。
いざ歯科医院へ
嫌々ながらネットで近くの歯科医院を検索する。口コミなんて基本悪い面を書く人のほうが多いからあんまり当てにならないでしょ、と思いながらもやっぱり評価は気になってしまう。
まあまあ評価も良くてまあまあ近場の歯科医院に決める。
○○デンタルクリニック。横文字カッコいいね。
歯科医院は堅苦しいおじいちゃん先生がいて、デンタルクリニックは若めの先生がいる気がする。ただの偏見だけど。
深呼吸して電話番号を入力。
歯科医院に電話するのも嫌だし、そもそも電話する行為自体が苦手。苦手の二重奏。
どもりながら用件を伝えたら、今日の午後2時頃に来院してくださいとのこと。
とりあえず歯の様子を見てみましょうということだった。
昼ご飯は食べたけど、緊張のあまり味がほとんどしなかった。
歯を磨いて家を出る。
車を走らせること10分。
数年ぶりの歯医者だ。たぶん大学生以来。
スリッパをはいてくださいって案内があったんだけど、子供用のスリッパしか見当たらない。隣に縦長のちょっとハイテクそうな機械が置いてあって、そこにスリッパが入ってるのかなと予想したけど、使い方がわからない。右往左往していたら見かねた受付のお姉さんが近寄ってきた。
お姉さん「ここのボタンを押してください」
あ、そんなとこにボタンあったのね。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだった。受付前から戦意喪失しかけてる。
デンタルクリニックなんて横文字浸かってるだけあって、室内はめっちゃおしゃれだった。
ウォーターサーバー置いてあるし、水槽の中を青くて綺麗な小魚が泳いでいるし、テレビ画面にはBTSのなんかCMみたいなのが流れてるし。
室内がおしゃれだろうと不安はぜんぜん消えないんだけどさ。
名前を呼ばれる。いざ出陣。
とりあえずお口を開けて歯の様子をチェックしてもらう。
医者「あー、親知らずがあるね。しかも虫歯になってる。これは抜いたほうがいいね」
最後通牒を突きつけられた瞬間だった。
医者「どうする?今日このまま抜いちゃう?」
正直断りたかったけど、ここで帰ったらたぶん次来る勇気が出るまでにまた1年ぐらいかかりそうだから、今日抜いてもらうようお願いした。たぶん涙目になってたと思う。
親知らずが歯の神経に触れてないか調べるため、レントゲン検査へ。
変なアーマーみたいなのを着て口を開けて待つ。
幸いなことに神経には触れてなかったようだ。よかった。
部屋に戻ると早速麻酔を打つことになった。
医者「麻酔するねー。ちょっとチクッとするよー」
歯茎に針刺すとか正気か!?
注射嫌いな僕からすると常軌を逸してるとしか思えない蛮行である。許すまじ、許すまじー!
なんてことを考えてる間にぶすっと刺された。ぶすっと。
そのあとなんかぐりぐりされる。え、心の準備をする前にもう歯を抜いちゃうの!?
めっちゃ混乱しながらもただただ違和感に耐え続ける。
医者「はーい、じゃあとりあえず少し時間を置こうか」
もしかしてもう抜き終わったの? あの一瞬で?
一人診察椅子(ベッド)に座ったまま待たされる僕。
奥歯にすごく違和感があって落ち着かない。
けど案外呆気なかったな。ドリルでぎゅいんぎゅいんもされなかったし。
ちょっと余裕が戻ってきたところで先生が帰還。
医者「それじゃあ抜こうか」
……えっ。まだ抜いてなかったの?じゃあさっきのぐりぐりは? 麻酔のあれこれ?
頭の中が真っ白になった。戦いはこれからなのに燃え尽きた感じ。
いや無理でしょ、ここから本番だなんて聞いてないよ!
ようやくボスを倒したと思ったらまさかの第二形態があったときもこんな気持ちだった。
医者「大きく口開けてくださいねー」
口開けるときまじで震えてた。
抜歯という名の地獄が始まる。
めっちゃごりごり言ってるうううぅぅぅ!
ごりごりメキメキ。口の中から聞こえちゃいけないような音が絶え間なく続く。
顎が外れるんじゃないかってぐらい、口の中で器具が暴れてる。
あと先生、「うーん」ってちょっと困ったふうに呟くのやめてもらっていいですか!?
めちゃくちゃ不安になるので!
麻酔のおかげで痛みはほぼ感じないけど、とにかく音と感触がめちゃくちゃ気持ちを不安にさせる。これ麻酔なかったら絶対ショック死するでしょ。麻酔発見した人にはほんと感謝しかない。
医者「はい、終わりました」
幸いなことに治療は2、3分で終わった。
口の中の違和感半端ないけど痛みはない。
せっかくなんで抜いた歯を記念に持って帰ることにする。ちらっとその場でも見たけど、虫歯のせいで歯に小さな穴があいていた。ほんとに穴あくんだね。
止血用のガーゼを噛みしめながら、部屋をあとにする。
支払いと次回の予約(抜いた箇所に異常がないか調べてくれるらしい)と処方箋を受け取って、途中で薬局で抗生剤と鎮痛剤を受け取って帰宅。
麻酔が効いてるおかげで、痛みで車の運転をミスるとかいう悲劇は起こらなかった。
ちなみに治療の負担金は約3,000円だった。
親知らずを抜いたあとが本番
親知らず(虫歯)は抜いたら終わりではない。
抜いた後も戦いは続くのだ。
歯茎にでっかいクレーターができてるんだから、抜いて「はい元通り」っていうわけにはいかないよね。
麻酔が効いている間は大したことない。
むしろ麻酔が切れてからが本番。
1時間30分ぐらいでちょっとずきずきし始める。
2時間たったころにはけっこう本格的な痛み。
この間は痛すぎてほとんど動けなかった。テレビを見て気を紛らわせようにも痛みのほうが強すぎてぜんぜん集中できん。
しかも麻酔のせいなのか、ずっと下唇に痺れを感じる。
怖くなってネットで「親知らず 下唇 痺れ」と調べたら、まれに半永久的に軽い痺れが残ることがあるっていう記述を見てひょえってなった。
抜歯の時に神経を損傷すると起こるらしい。
3時間ほど経つと若干痛みが引いてくるが、麻痺は残ったまま。
一難去ってまた一難なのか、とびくびくしていたが、さらに数十分ほどすると、ようやく痺れも消えてきた。
麻酔のせいだったらしい。よかった、ビビらせるなよ。あと先生、やぶ医者かと疑ってすみません。
痛みも治まってきたので、調子に乗ってゼリーを食べた。
さらに調子の乗ってシャワーを浴びたら、ちょっと痛みがぶり返した。心なしか血の味も感じる。血行がよくなってしまったらしい。
シャワーを一瞬だけ浴びただけでもこんなふうになるんだから、風呂なんか入ったらたぶんどばぁって血反吐が出るんじゃないかと思う。
なんやかんや痛みはだいぶ引いた。
抜歯で体力削られたせいか、布団に入ったらわりとすぐ眠りに落ちた。
翌日の話
翌日もわずかに痛みはあるものの、そこまでひどくはない。
普通にブログ書いてるし。
唾液に血は混ざってるけどね。
あの悪名高いドライソケットにもならずにすんだみたい。
いまも困ってることと言えば、ご飯を食べるのが少し大変なことぐらい。
親知らずを抜いた箇所とは反対の歯だけを使うようにして必死に噛んでる。
幸か不幸か、親知らずの生え方はまともだったようだ。これで横向きに生えてたとかだったら、たぶんこんな呑気にブログ更新なんてできなかったと思う。
とにもかくにも、ドリルでぎゅいんぎゅいんみたいな恐ろしい体験せずにすんだし、痛みも麻痺も無事にひいてくれたし、これでしばらくは歯医者の影に怯えなくてすむと思うと気が楽になる。
だいぶ経験値入った気がする。
このまま何事もなく回復してほしい。頼む。切実な願い。
最後に
まじで虫歯抜かなくても治療できる方法確立されないの?
もう2022年だよ?
AIに注力するのもいいけど虫歯を簡単に死滅させられる方法の模索にも力入れてほしい。絶対儲かると思う。歯科医院の存亡の危機とかいろいろ問題が起こるんだろうけど。
ハンコ廃止しようってなったときみたいにいろいろ紛糾しちゃうんだろうけど。
虫歯の新しい治療法が確立されたらたぶん全米が泣くね。僕も泣く。
以上。
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