『魔女の娘』冬月いろり(著)感想

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書評

舞台は現代日本。魔力をレンタルすることで仮初の魔法使いとなった帆香が、魔法学園に入学し、さまざまな経験を積んで成長していく物語です。

魔法に彩られた学園生活が、丁寧で温かみのある筆づかいで描かれています。

作者は冬月ふゆつきいろり先生。第25回電撃小説大賞で銀賞を受賞、『鏡のむこうの最果て図書館』でデビューした方です。

イラストはあすぱら先生。

学園が登場、しかも魔法ありの世界ということで、ファンタジー好きとしては購入しないという選択肢はありませんでした。

さっそく感想を書いていきたいと思います。

作品情報
  • 出版社:株式会社KADOKAWA
  • レーベル:メディアワークス文庫
  • 刊行月:2021年9月

あらすじ

どうしようもなかった。生まれた家も、魔法が使えないことも。

著名な魔女の娘でありながら、魔法が使えない「失くし者」の帆香ほのか。姿を消した母の手紙に導かれ辿り着いた「レンタル屋」で、月額9万8000円と引き換えに魔力を手にする。
母の面影を追い、憧れの魔法学園に入学したものの、クラスメイトが「失くし者」に向ける視線は冷ややかだった。
そんな中、生徒が次々と魔力を奪われる事件が勃発。疑いをかけられた帆香は、レンタル屋の息子・千夜せんやと共に自ら犯人捜しに乗り出す――! 現代の勤労魔法少女が贈る、新たな学園魔法ファンタジー開幕!

『魔女の娘』裏表紙

主な登場人物

  • 佐倉帆香(さくらほのか)……魔女の家系に生まれながら、魔法が使えない少女。母の魔法に魅せられて以来、魔女になりたいと強く願う。レンタル屋から魔力をレンタルし、学園に登校しようとするほどの行動力の持ち主
  • 一色千夜(いっしきせんや)……レンタル屋の息子。魔法学園の学生。とある理由から帆香を目の敵にする。整った容貌とミステリアスな雰囲気から、学園にファンが多い
  • 和栗英美(わぐりえみ)……帆香のルームメイト。帆香に対し他人行儀な態度をとっていたが、それにはある秘密があった
  • 胡桃(くるみ)……クララと呼ばれている不思議ちゃん。マイペースでなかなか会話が成立しないが、実は人のことをよく見ている
  • 安原海景(やすはらみかげ)……陰陽師の家系に生まれた、好奇心旺盛な男子生徒。美術部に所属している。帆香曰く、何だか憎めないタイプ

感想

逆境に負けない主人公

当初の印象通りの、伸び伸びとした温もりのある青春ファンタジー小説でした。

魔法使いの家系でありながら魔法を使えない『失くし者』への差別意識や一部のクラスメイトの悪意に満ちた嫌がらせなど理不尽な仕打ちも見られます。けれども、そんな嫌な部分を塗りつぶしてくれるほど、人の思いやりや優しさがあふれており、読後感は非常に爽やか。

中でも一番グッときたのは、逆境にも挫けず自分のなりたい魔法使いに少しでも近づこうとたゆまぬ努力を続ける主人公のひたむきな姿です。

魔力のレンタル代を稼ぐためアルバイトに精を出す一方、遅れを取り戻そうと学業にも懸命に打ち込みます。純粋に魔法に憧れ、努力を惜しまない彼女の姿には読んでいて勇気づけられました。

そんな帆香だからこそ、困ったときに手を差し伸べてくれる友達がいてくれるのでしょう。ルームメイトの英美、終始マイペースなクララ、口は悪いけど根は優しい千夜、とんでもない方向音痴の海景。

魔力は借り物ですが、魔法使いとしては誰よりも本物、そんなふうに思います。

憧れの魔法学園生活

学園生活の生き生きとした描写は本書の魅力の一つです。

魔法史や魔法実技、占星学、魔法化学、幻想生物学など、授業はどれも受けてみたくなるものばかり。

魔法に関する独自の歴史的背景も興味深い。明治近代化に伴い輸入された西洋魔法のほうが日本古来の魔法より優れていたことから、学園では西洋魔法の原書を読むために英語が必須科目になっているなど、設定がよく練られています。

こんな学園生活送ってみたい、読みながら何度もそう思いました。

いいですね、魔法。いいですね、魔法使い。やっぱり憧れます。

魔力を借りてでも魔法使いになろうとした帆香の気持ちがよくわかります。共感しかない!

箒に乗って夜空を飛ぶシーンが特に印象深く残りました。

現代的な魔法サービス

物語が動き出すきっかけとなるのが、世界にひとつしかない(と言われている)魔力のレンタルサービス。魔力の貸し出しを現代サービスと同じ位置づけにするアイデアが秀逸です。月額いくらとか初月半額サービスとか一年保証とか、神秘的なイメージが強い魔法に似つかわしくない言葉がばんばん飛び出してきて、思わず笑っちゃいました。

妙に現代的という点で言えば、魔法の実用性についての描写もあげられます。

魔法というと便利なものと思いがちですが、本書では科学技術の進歩により魔法の存在意義は薄れ始めているということが語られます。

確かに考えてみれば、つまみを捻っただけで点火するコンロや、食べ物を凍らせて保存する冷凍庫はある意味魔法と言えるかもしれません。魔女狩りが盛んな時代の人々が見たら、真っ先に粛清対象になったかも。

そんな中で魔法を学ぶ意義とはいったいなんなのか。

なかなか考えさせられる指摘です。

ちなみに、箒で空を飛べるようになるだけでも十分意義はある、と自分は思います。あと不測の事態における生存率向上にも役立ちそう。魔力さえあれば身体を温める炎も喉を潤す水も出し放題ですから。

最後に

素敵なお話でした。

魔法が存在する世界だからこその、ちょっと変わった日常の風景。好きです。

この学園での生活をもっとのぞいてみたかった……。

帆香の魔法使いとしての学びはまだまだ始まったばかり。

母と同じ「流浪の魔法使い」を目指す帆香の活躍を、また読んでみたい。

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