新たなダークヒロイン誕生『JK』松岡圭祐(著)感想

書評
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たまたまそこに居合わせたから――ただそれだけの理由で、不良グループによって惨殺された一家。

不良たちは自らの行為を反省することなく、大人たちの追求をかわし続ける。

ところが、1人の女子高生の登場により、事態は急変する。

彼女の名前は江崎瑛里華。

突如現れた少女の正体とは――?

久しぶりに小説を読みました。

今回手にした本は、松岡圭祐氏の新シリーズ『JK』。

文学ミステリの『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論』と同じ作者ですが、内容はまるで違うので注意。

本書の帯に書かれた『「高校事変」を超えた青春バイオレンス文学』の文字のとおり、かなりショッキングなシーンが連続します。

テロリストとの血みどろの戦いを描いた『高校事変』を超えるというのはなかなか攻めた売り文句だと思いましたが、中身を読んで納得しました。

フィクションの中だからこそ許される残酷なシーンの数々。暴力が飛び交い、底なしの悪意が蔓延する世界。目を背けたくなるような理不尽さと、悪を蹴散らす爽快感が絶妙なバランスで成り立っている。

重い。とにかく内容が重い。だけど面白い。

序盤からノンストップで展開する物語は、一気読み必至です。

作品情報
  • 出版社:株式会社KADOKAWA
  • レーベル:角川文庫
  • 刊行月:2022年5月

あらすじ

逗子の山中で発見された一家3人の焼死体。川崎にある懸野高校の1年生・有坂紗奈が両親と共に惨殺された。犯人は紗奈と同じ学校の同級生や上級生からなる不良グループであることが公然の事実とされたが、警察は決定的な証拠をあげることができず、彼らの悪行が止まることはなかった。しかし、1人の少女、高校1年生の江崎瑛里華が現れて事態は急展開をとげる。人気シリーズ「高校事変」を超える、青春バイオレンス文学!

『JK』裏表紙

感想

理不尽な社会

痛ましい事件は、今日もどこかで起きている。

いじめ、交通事故、殺人――。

僕らはたまたま悲劇とは無縁に生きているだけで、いつ何時、ルールを無視した理不尽な暴力にさらされるかわからない。

そんなことを思い知らされる一冊でした。

舞台は神奈川県川崎市。

友人たちとダンスの練習に励み、充実した高校生活を送っていた有坂紗奈の突然の死。

紗奈と同じ高校に通う不良グループが犯人ではないかという噂が流れるものの、彼らは孤立するどころか、逆に我が物顔で振舞い出す始末。

――という、序盤からとにかく胸糞悪い展開が続く本書。

読みやすい文章だからこそイメージがしやすく、残酷なシーンは目を覆いたくなるほどです。耐性のない人は読むのが辛いと思う。

ミステリを好んで読んでいる僕も、流し読みをしないと正直耐えられないぐらい生々しい描写でした。

そんな過酷な体験を強いる本書を読み進めることができた理由はただひとつ、この地獄のような世界に終わりが訪れる瞬間を見たかったから。

スカッとしないまま終われるかッ!

強烈すぎる序盤で読者の心を鷲掴みにしたまま、物語はそのまま一気に加速。

そして謎の少女、江崎瑛里華の登場により、これまで感じていた不快感がようやく爽快感に変わり始めます。序盤で挫けそうになった方も、ぜひ最後まで読み通してみてください。必ず溜飲が下がるはずです。

令和のダークヒロイン

僕たちは普段、法律をはじめとしたルールを守って生活をしています。ルールを破った者には、相応の罰が与えられる。そんな仕組みが正しく機能してくれると信じているからこそ、ルールを守っているのです。

ですが、もしその仕組みが機能しなかったら?

社会が守ってくれないとき、理不尽な暴力からいったいどうやって逃れればいいのか――。

日常的に暴力を振るい、ついには有坂紗奈たち3人の人間を惨殺した不良高校生たち。

本来、大人が対処しなければならないはずが、教師たちは見て見ぬふりをし、警察も証拠を掴めず彼らは野放し状態。

そんな頼りない社会に代わり不良たちに制裁を下すのが、 江崎瑛里華という一人の少女です。

美しい顔立ちと恐るべき身体能力を持った彼女は、とにかくキャラが魅力的。まるで殺戮マシーンのごとく不良たちを次々に倒していくかと思えば、時折優しさがのぞきます。そのミステリアスな姿に、誰もがハマること間違いないでしょう。

大人が、法律が、社会があてにならない世の中だからこそ、生まれ落ちてしまったダークヒロイン。

彼女が何者かは物語の終盤で明らかになりますが、その驚愕の正体に度肝を抜かれることでしょう。

周到に練られた物語に、ただただ舌を巻くばかりです。

最後に

目には目を、悪には悪を。

女子高生による痛快な復讐劇と、彼女にまつわる謎が魅力的なバイオレンス小説。読み始めたら最後、ラストまで目が離せません。

頼りない大人と、自ら行動を起こそうとする高校生との対比も印象的でした。経験を積んだはずの大人が保身を気にして動かず、庇護されるべきと思われがちな高校生が自らの力で過酷な運命を切り拓こうとする。読んでいて胸が痛みました。

タイトルに込められた意味も秀逸です。

シリーズ化されるようなので、今後どのような展開が続くのか、いまからとても楽しみです。

松岡圭祐(著)
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