ミステリと歴史小説の融合『屍実盛』感想

書評

今回紹介するのは、齊藤飛鳥氏の『屍実盛』です。こちらの作品は、第15回ミステリーズ新人賞を受賞された短編推理小説となります。

著者の名前が、乃木坂46メンバー齊藤飛鳥氏と酷似しているため、受賞作品発表時にTwitter上では驚きの声が上がっていましたが、別人です。お間違いのないよう!
著者は、児童文学作家としても活躍されている方です。

1183年。寂れた京都に留まった、平家一門の唯一の離脱者・平頼盛の元に、ある日依頼が来る。京都を占拠する木曾義仲からで、「首のない五つの屍から、恩人である斎藤別当実盛の遺体を見つけてほしい」というものだった。断れば家族や家臣の命が危うくなると考え、頼盛は難解な謎に挑むことになるが……。『平家物語』や謡曲『実盛』に取り上げられた実盛の最期を題材にした、歴史ミステリの傑作!
第15回ミステリーズ!新人賞選考経過、選評=大崎梢 新保博久 米澤穂信
(本電子書籍は『ミステリーズ! vol.91』(2018年10月初版発行)に掲載の同作品を電子書籍化したものです。)

「Amazon 内容紹介」より

提示される謎が他にはあまり類を見ないタイプのものなので、歴史好きの方もそうでない方も充分に楽しめる作品となっています。
ページ数も多くはありませんので、これを機に歴史小説を読んでみたいという方にもおすすめできます。

五つの屍から絞り込む秀逸なロジック

本書の最大のキモは、やはり「首のない五つの屍からどうやって特定の人物の遺体を当てるか」という点です。

次々と候補を絞っていく手腕には、おお、と思わず目を瞠りました。

ある程度の法医学的知識が必要となってくるので、読者が自力で真相にたどり着くのは至難の業ですが、パズル的要素は読み進めるだけでも充分に楽しめます。

そしてもう一つ忘れてはならないのが、斎藤別当実盛の武士としての生き様です。老武者として侮られまいと、若く装って戦場を駆けた彼の最期は、周囲の者たちにも多かれ少なかれ影響を及ぼします。

それがはたしてどのような結果をもたらすのかは……ぜひ本書に目を通してご確認を!

歴史小説はやっぱり単語が難しい

平安時代や戦国時代といった、昔の日本を舞台にした小説の常として、出てくる単語が難しいという点が挙げられます。「連銭葦毛の駿馬」「鎧直垂」「萌黄縅」等々、のっけからあまりなじみのない単語のオンパレードです。

ふりがなが振られていないと読むことすらままならない笑

おまけに登場人物たちの名もややこしい。実盛、頼盛、清盛、光盛などなど。似たような名前が出てくるものだから、ときどき登場人物を見失ってしまいました笑

小説を書く際には似たような名前を避けろと言われますが、なるほど確かにと身をもって体験しました。まあ、同じような響きの登場人物が出てきてしまうのは、時代小説では仕方がないのでしょう。

日本史に通じている方ならば容易く読み進められるのかもしれませんが、不慣れな者だと、実物をイメージするのも一苦労ですし、気になりだすと読む勢いがそがれてしまいます(これが理由で、つい歴史小説を敬遠してしまうんですよね……)。

つらつらと不満を書き連ねてしまいましたが、内容としてはとてもおもしろかったです。嘘じゃないですよ!

難しい単語だって、考え方を変えれば、勉強になりますし、日本史を学んだ方には「この人知ってる!」と自分の知識が役に立つ場面も多く出てくるため、おもしろいと感じるポイントはいくつもあります。読んで損はありません。

最後には、そう来たか! と唸らずにはいられない展開が待っています。

最後に

現代ではあまり考えられない、戦があった昔だからこそ起こり得るミステリです。
一風変わった謎ですが、それがまたおもしろい。

本作品は『ミステリーズ! vol.91』に収録されていますが、それとは別に、電子書籍版で単品として販売されています。単品の場合は、値段も非常にお手頃(自動販売機で買うジュースよりも安い!)なので、興味のある方はぜひご一読を!

太田忠司ほか(著)
齊藤飛鳥(著)

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