『MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』内藤了(著)感想

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書評

今回紹介するのは、内藤了氏の『MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』です。

東京駅のコインロッカーで、箱詰めになった少年の遺体が発見される。遺体は全裸で、不気味な面を着けていた。東京駅おもて交番で研修中の堀北恵平は、女性っぽくない名前を気にする新人警察官。先輩刑事に協力して事件を捜査することになった彼女は、古びた交番に迷い込み、過去のある猟奇殺人について聞く。その顛末を知った恵平は、犯人のおぞましい目的に気づく!「比奈子」シリーズ著者による新ヒロインの警察小説、開幕!


「BOOK」データベースより

内藤了氏の作品と言えば、ドラマ化もされた「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズが有名でしょう。私は映像しかまだ見ておらず、原作のほうは読んだことがありませんが……。

前シリーズのドラマがなかなか面白かったので、本書を購入してみました。

あらすじ

本書は角川ホラー文庫に収録されていますが、呪いや幽霊といった超常現象によるおどかしはありません。

あくまで、猟奇殺人が起こり、新米警官の主人公と先輩刑事とがその犯人を追う警察小説となっています。

主人公は、22歳の女性新米警官、堀北恵平

彼女の相棒となるのは、若手刑事平野ジンゾウです。

事件の発端は、東京駅のコインロッカーから見つかった木箱から、詰め込まれた少年の遺体が発見されたことでした。

全裸。そして遺体の顔には、なぜか奇妙な面が。

凄惨な現場を目にした恵平は、事件発生後、東京駅をさまよううちに、とある古びた交番に迷い込みます。

そこで出会ったのは、柏村という老警官。

彼の口から聞かされたのは、本件とは別の、とある猟奇殺人の話でした。

仮面の出所を捜査する平野と共に、恵平は鎌倉へ向かいますが、有力な手掛かりは得られません。神社の職員や被害者少年の友人らから話を聞き、東京へ戻ります。

そこで再び、恵平は古びた交番に迷い込みます。

柏村の言葉からとある手掛かりを得た2人は、 靴磨きのペイさんらの協力を得て、 やがて事件の真相へと近づいていきます。

懸命に捜査を続ける2人。彼女らを待ち受けていたのは、恐るべき殺人の動機と、犯人の正体でした。

事件の裏に潜む人間の狂気

プロローグで語られるのは別の猟奇殺人の顛末ですが、のっけからおぞましい人間の闇を見せつけられ、物語に一気に引き込まれます。

日常の中に突如出現した、異常な事件。

少年の異様な姿や、不気味な面などの要素から、物語全体を常に不気味な雰囲気が覆い、この先にいったいどんな真実が待ち受けているのだろう、と気になって仕方がありませんでした。

怖いけれど見てしまう、というホラー特有の感情の動きに近いかもしれません。

事件の背景は、物語の途中で察しがついてしまいますが、それでもすべての真実が明らかになったときは、背中がぞくりとしました。陳腐な表現となってしまいますが、やはり人間が一番恐ろしい、ということでしょう。

犯人がわりとあっさり捕まってしまったことについては、少し肩透かしを食らった感がありましたが。

捜査に当たった恵平に、老警官・柏村はこう言葉を送ります。

だから事件は解決させて、解決できるものだということを自分自身に教え込まなきゃならんのだ。そうでなければ人を信用できなくなるし、人を信用できなくなれば、警察官ではいられない

異常な犯罪があふれる中、人の良いところを見る目を養うことが大切だという彼の言葉は、非常に胸にしみました。

最後に

少年の遺体の描写等、生々しい個所がいくつかありますので、そういったグロテスクな表現が苦手な方は、避けたほうがいいかもしれません。

ただ、ストーリーはぐいぐい引き込まれますし、登場するキャラクターたちも個性的ですので、気になる方はぜひ一読してみてください。

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