『変人のサラダボウル』平坂読(著)感想

書評

岐阜を舞台に、異世界からやってきた皇女サラと女騎士リヴィア、そして貧乏探偵・鏑矢惣助が送る日常コメディ。

あらすじの探偵という言葉に惹かれ、書店で手に取りました。

なんちゃって探偵かな、という気持ちが最初はあったんですけど、読んでみたら思った以上に探偵していましたね。探偵業届出証明書が額に入れて飾られているとか。

著者は平坂読ひらさかよみ先生。

イラストはカントク先生。表紙の天真爛漫なサラがかわいい。

帯の織田信長に面食らいましたが、なるほど岐阜だからか。

本書はタイトルの通り、個性的なキャラクターたちが織りなす群像喜劇です。

ストレスフリーで読めて物語もテンポよく進むので、気づいたときには物語が終わってしまっていました。もっと彼らの日常をのぞいてみたかった……。

あらすじ

貧乏探偵、鏑矢惣助が尾行中に出逢ったのは、魔術を操る異世界の皇女サラだった。なし崩し的にサラとの同居生活を始める惣助だが、サラはあっという間に現代日本に馴染んでいく。一方、サラに続いて転移してきた女騎士リヴィアは、ホームレスに身をやつしながらも意外と楽しい日々を送る。前向きにたくましく生きる二人の異世界人の姿は、惣助のほか、鬼畜弁護士、別れさせ工作員、宗教家といったこの地に生きる変わり者たちにも影響を与えていき――。
平坂読×カントクコンビがこの時代に放つ、天下無双の群像喜劇、堂々登場!

『変人のサラダボウル』裏表紙

主な登場人物

  • 鏑矢惣助(かぶらやそうすけ)……29歳の貧乏探偵。これといった目立たない容姿を生かし、細々と探偵業務を続ける
  • サラ・ダ・オディン……探偵事務所の居候。その正体は、オフィム帝国第七皇女。反乱軍に襲撃されるも、異世界へと逃げ延びる。転移先で惣助と出会い、探偵事務所に転がり込んだ。デジタル機器を瞬く間に使いこなすほど優秀である一方、運動音痴
  • リヴィア・ド・ウーディス……ホームレス女性騎士。サラの側近。サラの後を追い日本へやってきたが、家なし、金なし、職なしのため、ホームレスとして生活することに。サラと同様、恐るべき順応性を発揮する
  • 愛崎ブレンダ(あいさきぶれんだ)……弁護士。10代半ばにしか見えない。鏑矢探偵事務所の常連の一人
  • 閨春香(ねやはるか)……大手探偵事務所に所属する探偵。惣助に気のある様子を見せる

感想

異世界(日本)でたくましく生きる少女たち

物語の中心となるのは、異世界からやってきたサラとリヴィア。

日本から異世界に転移する小説は枚挙にいとまがありませんが、本書は異世界から日本に転移してくるという逆のパターンです。

サラとリヴィア、この2人のキャラクターがとにかく魅力的。

慣れない異世界(日本)で右往左往するのかと思いきや、かたや探偵の相棒として、かたや家なし、職なし、お金なしのホームレスとしてものの見事に日本の生活に順応。

サラはあっという間にインスタグラムをも使いこなし、鏑矢探偵事務所の宣伝方法に鋭い指摘を入れるまでに。下手したら現地人の惣助よりも適応しているかも。

魔術や脅威的な身体能力を生かし、次々とトラブルを解決していく様子は読んでいて小気味いい。

特に、リヴィアのポンコツなのか優秀なのかわからない活躍ぶりにはついつい笑っちゃいました。周囲の勘違いがさらなる勘違いを呼び、いずれとんでもない大物として成長しそう。

重い雰囲気になりがちなホームレス生活も、ライトノベルにかかればマイルドに仕上がっています。

サラとリヴィアが現れたことで変化を余儀なくされる人々。

異世界人と変人たちとの化学反応が起こす変化から、目が離せませんでした!

日常と非日常が交差する物語

大きな山場はないものの、風俗店やカルト団体といった地方都市のアンダーグラウンド的な一面が描かれており、先がとにかく気になる物語構成。

惣助という保護者がいるサラはまだしも、一人ホームレスに身をやつしたリヴィアがおかしな道に進んでしまわないか、常に心配がつきず……。

不倫、浮気、恐喝――探偵という設定が存分に生かされ、岐阜の表と裏を変幻自在に行き交うストーリーがとても面白かったです!

尾行や脅迫の証拠の集めなど、探偵らしい描写が丁寧に描かれていてびっくりしました。フィクションだと派手になりがちな探偵活動ですが、本書のものはより現実的で地味。でも、そこがいい。

信念を持って探偵業をしている惣助の姿が立派でした。

最後に

リヴィアが日本にやってきた際、山の上のライトアップされた城を見て、城主が住んでいるだろうから会いにいかなければと考えるシーンがありました。てっきり山の上に立つ城というのは夜のホテルのことで、勘違いして訪ねたリヴィアが慌てふためく、という流れを予想をしましたが、城とは岐阜城だったというオチ。ちょっとほかの小説に毒されすぎました。猛省します。

群像劇ではありますが、サラとリヴィア以外の動きはそれほどなく、まだまだ各キャラの顔出し程度といったところ。

弁護士や別れ工作員が本格的に動き出したらどうなるのか気になりますね。教祖はまた登場するのかな。

個人的にはリヴィアの活躍がもっと見たい!

どんな爪痕を残していくのか、続刊が楽しみ。


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