映画史に大きな足跡を残したアニメーション映画『君の名は。』を手掛けた新海誠監督の最新作『天気の子』。
上映されてから一か月が経ちましたが、ようやく観に行ってきました!
だいぶ出遅れた感はありますが……
映画を鑑賞して感じたこと思ったことを、つらつらと書き連ねていきたいと思います。
考察なんてものはありません。 民俗学など、学問的な観点からの推察は他に任せます。
新海誠監督のインタビュー等もまったく見ていないため、監督の想いと相反する内容もあるかと思いますが、そこは個人の独断と偏見による感想ということでご容赦くださいませ。
あらすじ
「あの光の中に、行ってみたかった」
映画『天気の子』公式サイト
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。
感想
ずっと感じていたモヤモヤ感
真っ先に感じたのは違和感でした。
家出少年である主人公の森嶋帆高は、のっけからかなり際どい事件を起こします。
東京へやって来て偶然手にした拳銃を、ヒロインである天野陽菜を助けるため、人に向けて発砲してしまうのです。幸い、負傷者を出さずにすみましたが、思わず「おいおい」と思ってしまいました。私たちからすれば彼の行為は立派な犯罪です。
そんな犯罪をきっかけとして、二人の関係が進んでいくのが本作です。
物語後半、帆高は警察から追われることになりました。このとき帆高は、陽菜そして彼女の弟である天野凪とともに逃亡します。
陽菜を失ってからは、警官の手を振り切り、陽奈を探そうとします。
法や道徳の観点からすれば、彼の行為は許されるものではないでしょう。
作品の中では、陽菜を救うための正しい行動のように描かれているようにも見えますが、もし現実でそのような事件が起これば大問題となるに違いありません。
物語終盤、帆高は陽菜を救うため、再び拳銃を発砲します。
私はどうしても、彼の行為が罪に問われる類のものであることに、ずっと気持ち悪いモヤモヤ感を抱いていました。
法治国家に住む身としては、正しくないことを積み重ねる主人公に、感情移入がうまくできませんでした。
子どもと大人の対立
終始、居心地の悪さを感じていましたが、あるときふと思いました。
社会の歯車になる前の私がこの映画を観たら、どんな感想を持ったのだろう、と。
見方を変えれば、世界も変わります。
好きな人のために手段を選ばずがむしゃらに行動した帆高は、本当に彼女のことが好きだったのでしょう。
愛する人のために世界を敵に回す、という話の流れは、真新しいものではありません。
もし、もっと子どものときにこの映画を見ていたら、大人たちに負けず、陽菜を一途に想う帆高の行動に感化されたかもしれません。かっこいい!と思ったかもしれません。
そうならなかったのは、ひとえに私がすでに大人になってしまったからでしょう。
私は、自分にとっての正しさよりも、社会にとっての正しさを優先させなければならないことを知ってしまったのです。
選ぶべきは、愛する人か、社会か
本作では、陽奈を救ったことで、逆に社会は甚大な被害を受けてしまいます。
もし人々が、陽菜が犠牲になりさえすれば東京は水没なんてしなかったと知ったらどうなるでしょう。
おそらく、彼女が生き延びたことを非難する人間が少なからず出てくるはずです。
帆高と対立する大人の一人である須賀圭介の言う通り、一人が犠牲になるだけで世界が元どおりになるなら、多くの人がそれを望むでしょう。
とはいえ、その犠牲になる一人にとってはたまったものではありません。
非難する人々は、自分は犠牲にならない安全な立場にいるからこそ、自分とはまったくの無関係な他人を容易に切り捨てられるのです。
帆高は、正しいことをしようとする大人から逃げ、社会を救わずに、陽奈を救うことを選びます。
大人である私たちは、帆高の行為に疑問を覚えるかもしれません。
愛する人と社会を天秤にかけたとき、どちらに傾くのか。
その答えは、大人になるにつれて変わっていくのでしょう。
子どもにとって、社会など二の次で、世界は自分を回っています。だからこそ、大切な人のためにあそこまで無謀に動くことができるのだと思います。
大人になり、社会の歯車の一つとなったいまは、愛する人を救いたいという純粋な願いに忠実でいることは、かなり難しいでしょう。
大人になると、優先するべき順番をそう簡単には変えられないのです。
ラストはハッピーエンドか?
ラストがハッピーエンドかどうかは、微妙なところだと思います。
東京は水没し、壊滅的な被害を受けました。
こんな結果は間違っている、帆高の選択は誤りだ、という人がいるかもしれません。
反対に、陽菜も一人の人間であり、彼女だけを犠牲にしていいはずがない、彼女を救った帆高の選択は正しかった、という人もいるでしょう。
なんだかんだ言ってきましたが、私は後者よりです。
最後に
賛否両論ありそうな作品だなと思いました。
手放しでほめることはできません。しかし、子どもから大人になるにつれて変質していった自分の感覚、考え方を改めて認識するきっかけとなることでしょう。
正しさとはなにか。誰にとっての正しさなのか。
おもしろかった!だけではすますことができない、深い余韻を残す作品です。
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