中世ヨーロッパの日常生活や世界観を学べるおすすめ本

書評
スポンサーリンク

ファンタジー作品では、いわゆる中世ヨーロッパ風の世界観が多く見られます。

人々は森に近い農村や城壁に囲まれた都市に住み、貴族や王族と言った一部の特権階級が支配している。
宗教の影響が色濃く出ており、教会は大きな権力を有している。
占星術や錬金術が研究され、文明レベルはあまり高くない。

そんな印象の強い中世ヨーロッパですが、実際のところはどうだったんでしょうか。

どんな食事をしていた? 娯楽はあった? 学校では生徒になにを教えていた? どんな職業が存在していた?

考え始めると気になることばかりです。

今回は、中世ヨーロッパの世界を深く知ることのできる本をいくつかご紹介します。人々の生活史から一風変わった慣行に関するものまで種類はさまざま。ファンタジー小説の執筆にも役立つこと間違いなし。

世界史の授業だけではなかなか見えてこない、当時を生きる人々の生活や感性に触れることができる本ばかりです。

図解中世の生活

およそ5世紀から14、15世紀のいわゆる中世ヨーロッパの衣食住の実態が網羅された本。

農村や都市の人々の暮らしぶり、商人や娼婦などの各職業の紹介、教会や城砦といった組織・施設の説明など、ファンタジーでお馴染みの中世世界のあれこれを幅広く知ることができます。

ただし範囲が広い分、ひとつひとつの内容は見開き1ページ分の記述しかありません。より詳しい内容を知りたい場合はほかの書籍等を当たる必要があります。

とはいえ、内容は簡潔にまとめられており読みやすく、イラストも取り入れられているのでとっつきやすい。

文字だらけの小難しい専門書のような本は苦手! 中世ヨーロッパがどんな時代だったのか大まかな雰囲気を知りたい! という方におすすめ。

中世ヨーロッパを知る最初の入門書としてはうってつけの本と言えます。

中世を旅する人びと ヨーロッパ庶民生活点描

中世ヨーロッパのうち、特にドイツ地域の庶民生活に焦点を当てて描かれた本。

村の道と街道との違いから始まり、川と橋の関係、あちこち移動する旅人と定住者である農民とが出会う居酒屋・旅籠の実態、そして粉ひき、パン屋、牧人、肉屋、ジプシー、乞食、遍歴職人などさまざまな職業のエピソードが軽妙な語り口で書かれています。

十字路は霊の集まる場所としてみなされていたり、河川は治癒力を持っていると考えられていたりと、自然に畏怖を抱いていた時代の人々の感じ方、考え方に触れることができます。

当時のヨーロッパでは乞食が必要不可欠な存在であったというから驚きです。

中世ヨーロッパの人々は、なにを考えどのように生きていたのか。暮らしの中の物質的な面だけでなく、精神的な面も詳しく知ることができる貴重な一冊。

けっこうな分量があるので最初は戸惑うかもしれませんが、文章は読みやすく内容も非常に濃いものとなっています。

中世の星の下で

『中世を旅する人びと』と同様、主にドイツ地域を中心にして描かれる本書は、中世ヨーロッパの庶民の生活をさまざまな面から伝えてくれます。

歴史学に対する意見を含めた全35篇からなり、ひとつのテーマが数ページの中に簡潔にまとめられているので、どこから読んでも面白い。

キリスト教がもたらした社会や人々の変化、中世の都市を支えたギルド・ツンフト・職人組合といった仲間団体はもちろんのこと、石、橋、風呂、涙、ビール造り、鐘の音など、具体的なものと人との関係を読み取っていく過程は新鮮で驚きにあふれています。

人間狼に見る、都市の形成と共に変化していった人と動物との関係も興味深い。なぜ人間狼は誕生したのか。狩の友であったはずの犬が、なぜ差別されるようになったのか。

政治や経済に重きを置いた歴史からは決して見えてこない、当時を生きた人々の暮らしを深く知るのにおすすめです。

中世ヨーロッパの都市の生活

双子が生まれるのは、母親が2人の男性と関係を持ったから――。

知識や技術が不足し、多くの迷信がはびこっていた時代。

そんな中世ヨーロッパの都市で、人々はいったいどのような生活を営んでいたのか。本書は、1250年頃のフランス、シャンパーニュ地方のトロワを軸に据え、中世ヨーロッパの人々の暮らしぶりを詳らかにした一冊。

市民の食事風景や住居の間取りから始まり、出産、子どもの成長、結婚、葬儀など人生の節目となる出来事や、職人や商人、医師、作家といった職業人たちの仕事の様子が生き生きと描かれています。

聖人の列聖の仕組み、偽物まで氾濫していた聖遺物など、宗教関係のエピソードも興味深い。

資料としてだけでなく、読み物としても楽しめます。中世ヨーロッパに生きた人々の息遣いを、身近に感じることができるでしょう。

ジョゼフ・ギース (著), フランシス・ギース (著), 青島 淑子 (翻訳)

大聖堂・製鉄・水車ー中世ヨーロッパのテクノロジー

中世ヨーロッパにおいて発展したテクノロジーについてまとめられた本。

その内容は、農具、服、橋、船、馬車、城、石弓、投石器、羅針儀、時計、本、大砲など、日用品から巨大な建造物までさまざまな分野に及んでおり、表題の大聖堂、製鉄、水車だけにとどまらない。

いかにして数々の技術革新はなされてきたのか。そして、テクノロジーの発展とともに中世ヨーロッパ社会がどのように変化を遂げてきたのか。ヨーロッパ全域を対象に、年代ごとにつまびらかにした本書は大ボリューム。

鍛冶屋が訴えられたエピソードなど、ちょっとした小ネタも混ざっていています。

製鉄の手順や道具の使い方など現物を知らないと想像しにくい記述部分はあるものの、中世ヨーロッパの技術を広く知ることのできる、読み応え十分な一冊です。

ジョゼフ・ギース (著), フランシス・ギース (著), 栗原 泉 (翻訳)

中世騎士物語

中世盛期のフランスに生まれた架空の騎士ジェラールを案内役として、中世ヨーロッパで活躍した騎士の歴史や生き方を解説した本。

剣や槍、棍棒といった武器、兜や鎧、実際の戦いで用いられた戦術、城の機能などが時代ごとにわかりやすく紹介されています。特に装備や城の外観は白黒のイラストがついており、大変イメージしやすい。

叙任式や騎士道、紋章といった騎士についてだけでなく、彼らの生活に関連した食事や暦、農法、教育、教会や修道会といった中世ヨーロッパを語るに外せない要素の説明もなされています。

フランス領主たちの勢力図や、当時のフランス王権の支配地域の図が掲載されている点もありがたい。

騎士とはどういう存在だったのかを知る入門書として手に取りやすい一冊。

中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク

タイトルの通り、中世ヨーロッパに実在した様々な職業を紹介する本。

剣士や吟遊詩人、錬金術師といった馴染みのある職業から、傘さし、鳥刺し、コーヒー嗅ぎなど一風変わった職業まで豊富なラインナップがそろっています。その数はなんと100種類以上。中世の西洋中心ですが、古代や近代、イスラム圏やアジア圏の職業にも一部触れられています。

攻略本のジョブクラス紹介のような体裁のため、眺めるだけでもわくわくします。職業ごとに描かれているイメージイラストも可愛らしくて味わい深い。

大判のページを埋め尽くす文章はコミカルな語り口をしているものの、膨大な参考文献に裏打ちされており凄まじい量の情報を含んでいます。

これだけの職業を一気に学べる本はそうそうないでしょう。

触れただけで穢れが感染すると恐れられ蔑まれた賤業の数々、男性ソプラノの需要の高まりの犠牲となった少年たち、平均寿命わずか3ヵ月の鉱山奴隷――。

職業を通じて中世の生活史も知ることができ、創作のネタ本としても最適な一冊となっています。

動物裁判

中世ヨーロッパでは、動物や昆虫、果ては植物や鐘までもが被告として裁判にかけられていた!?

判事は被害をもたらした小動物にむけて律儀に裁判の出廷を求め、弁護士は被告となった小動物のために巧みな弁舌を奮った。鼠が定刻になっても出頭しないのは、猫の脅威から逃れるため遠回りをする必要があったからである――。弁護士と検察官はときに聖書の一節を持ち出し戦ったという。

なぜ動物や昆虫が、人間と同じ裁判にかけられたのか。

本書は、そんな現代ではとうてい考えられない奇妙な習慣の謎に迫ります。

前半では豊富な動物裁判の事例を紹介し、後半では不思議な習慣が成立したきっかけを、自然観や宗教の面から読み解いていきます。動物裁判自体はもちろんのこと、森林などの自然に対する人々の感受性の変化もなかなか面白い。

中世ヨーロッパの新たな姿を垣間見ることができます。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました