『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』玩具堂(著)感想

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書評

こんにちは、ライムです。

本日紹介するのは、高校を舞台にした学園ラブコメミステリー小説、『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』です!

本書は、日常のちょっとしたトラブルを解決する、いわゆる“日常の謎”を題材にしています。死人は出ませんし、警察も出ません。

収録されているお話は全3話。

作品情報

レーベル:MF文庫J
発売日:2020年5月25日
著者:玩具堂
イラスト:悠里なゆた

第一話のみカクヨムでも掲載されているので、雰囲気を掴みたい方はそちらで試し読みができます。

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あらすじ

入学早々、俺は失敗した。親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した推理小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺に――
「それさ、そもそも事件じゃないね〜」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村くん」
山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけどたまに狙ってるよね!? 山田さんと少し甘い、本格派学園ミステリーラブコメ。

『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』裏表紙

主な登場人物

  • 戸村和(とむらなぎ)……主人公。父親が探偵業を営んでいる。入学式の日の自己紹介のときに親の仕事を口走ったせいで、クラスメートからトラブル解決を依頼されるようになる。雨恵いわく「初心者向け男子」
  • 山田雨恵(やまだあまえ)……雪音の双子の姉。言動がチャラくていい加減。基本物事に無関心だが、興味を示したものについては驚異的な集中力を発揮する。靴下を履いているとよく眠れない
  • 山田雪音(やまだゆきね)……雨恵の双子の妹。委員長も務める真面目な優等生。だらしがない姉の面倒をよく見ている。読書家であり、ミステリマニアでもある。

感想

とっつきやすいミステリー

ライトノベルというだけあって、とても読みやすいミステリー小説でした。

双子でありながら正反対の性格をしている山田姉妹の掛け合いも面白い。

閃きに優れた姉・雨恵と努力型の妹・雪音。互いにちょっと口が悪くなったり、ときにはすれ違ったりもする二人。けれどもなんだかんだお互いのことを大切に思っている様子が伝わってきて、ほっこりした気分になりました。

そんな二人の姉妹に挟まれているのが、主人公の戸村和です。

姉妹に比べてこれといった特徴が見当たらないごく普通の平凡な男子高校生。両隣に座る姉妹にからかわれ、おちょくられ、苦手意識を持ちながらも関わり合いを持ってしまう。

次第に打ち解けていく三人。

美少女に挟まれた高校生活なんてうらやましすぎるだろ!

おい戸村、ちょっとそこを代われ。

閑話休題。

本書の魅力は山田姉妹をはじめとしたキャラクターたちだけではありません。

戸村たちが挑む三つの謎も、個性的で非常に面白い。どの謎も一筋縄ではいかない雰囲気がばんばん醸し出されており、どうやって解決するのか、どんな結末を迎えるのかと興味をひかれっぱなしでした。

ミステリーと聞くと、小難しい人間関係や複雑なタイムテーブルなどが思い浮かび、とっつきにくい印象を抱くかもしれませんが、本書に関しては心配無用です。

戸村や山田姉妹が愉快な掛け合いを挟みながら、道筋立てて事件を整理、解決へと導いていくので、非常にわかりやすい。

謎解きの楽しみを気軽に楽しめる作品です。

以下、各話の簡単なあらすじを紹介していきます。

第一話 探偵と象

入学式の自己紹介の際、父親が探偵業を営んでいると口走ってしまった戸村。そのことが原因で、クラスメートの琴ノ橋からとある相談を持ちかけられてしまう。その相談内容とは、彼氏の浮気相手を突き止めてほしいというものだった。頭を抱える戸村だったが、そこに隣席の雪音が話しかけてきて――。

探偵といえば浮気調査、浮気調査といえば探偵でしょう。ということで、第一話は浮気にまつわる謎に戸村たちが挑みます。

目撃者たちの証言だけを頼りに真相を突き止める手法は、さながら安楽椅子探偵のようでした。

第二話 史上最薄殺人事件

琴ノ橋の悩みを解決したことで、ちょっとばかりウワサになっている戸村。そんな彼のもとに、新たな依頼が舞い込む。なんとライトノベルのカバーだけから、作中の事件の犯人を当ててほしいというのだ。

依頼部分を読んだ時点で、「え、これ解決できるの?」と思わず首を捻りました。

いやいや、カバーに書いてあるのなんて、せいぜいあらすじとよくて登場人物一覧ぐらいでしょ(創元推理文庫には書いてある)。そんなんでどうやって推理するのよ?

安心してください。解決できますよ。

未完の小説の犯人を当てる、という話なら前に読んだことがありますが、文庫本のカバーだけから犯人を推理するという話は初めてでした。

とにかく謎が謎すぎて先が気になるお話。

そして雪音がかわいい

第三話 放課後、はさまれる、ひっくり返る

山田姉妹が喧嘩した。きっかけは些細なことだった。最初は一時的なものだろうと考えていた戸村だったが、予想に反し喧嘩が長引いてしまう。そんなとき、美術部の三原が訪れ、とある事件の調査を頼みたいと言ってきた。「いったい、なにが起こったんですか?」「ナイフで胸を一突きだ」美術部で起こった凶行の真相とは――?

これまでほどほどに仲がよくほどほどに喧嘩していた山田姉妹が、ひょんなことから本格的な戦争状態に。

戸村が姉妹を気にかけるシーンからは彼の漢気を感じました。やるときはやる男、それが主人公

それぞれのキャラが胸のうちに抱く本音を垣間見れるお話でした。

印象に残った文

強者は、存在するだけで相対的弱者を作ってしまう。ある分野で優秀であるだけで、望まざる加害者になってしまうこともありうるのだ。

『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』 238頁

そう、あれは悪意だ。悪意に対する悪意だ。

『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』 271頁

最後に

どの話も面白かったですが、個人的に一番のお気に入りは第二話『史上最薄殺人事件』です。

文庫カバーだけから小説の犯人を当てるという前代未聞の謎がユニークすぎでした。こんな解き方もあるのか! と目から鱗です。

最後の山田姉妹それぞれのエピローグもエモい。

どうやら戸村のことが気になり出した二人。

今後の展開から目が離せません。

次作『探偵くんと鋭い山田さん2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』の紹介はこちら。

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