『#塚森裕太がログアウトしたら』浅原ナオト(著)感想

書評

ドラマ化され映画化も決まっている『腐女子、うっかりゲイに告る』の原作者、浅原ナオト先生の3つ目の作品。

デビュー作同様、本作も同性愛がテーマの物語です。

あらすじ

高3のバスケ部エース・塚森裕太は自分がゲイだとInstagramでカミングアウト。それがバズって有名に。
このカミングアウトが、同じ学校の隠れゲイの少年、娘がレズビアンではないかと疑う男性教師、塚森を追いかけるファンのJK、塚森を崇拝しているバスケ部の後輩へと変化をもたらしていく。そして塚森自身にも変化が表れ…。
作り上げてきた「自分」からログアウトしたら、「本当の自分」になれると思っていた――痛みと希望が胸を刺す青春群像劇。

#塚森裕太がログアウトしたら

感想

バスケ部のエースであり、イケメンで爽やか好青年の塚森裕太。彼はある日、自身のインスタで自分がゲイであることをカミングアウトします。

誰からも好かれる塚森裕太というアカウントからログアウトし、本当の自分でいられたら――。

普段の人のよさもあってか、返ってくる反応は肯定的なものばかり。
家族や友人、バスケ部の仲間たちにも概ね受け入れられていきます。

やがて塚森の投稿は、Twitterでバズり、瞬く間にSNS上に広がることに。不特定多数のコメントがつくばかりではなく、メディアの取材の申し込みまでがされます。

学校のスターから、一躍時のひとへ。

そんな塚森のカミングアウトは、周囲の人間にも大なり小なり影響を与えていきます。

同じ学校の1年生であり、ゲイでもある清水瑛斗。彼はスター性のある塚森に対してコンプレックスを抱き、塚森のカミングアウトを快く思いません。身近なところにもゲイがいる。みんながそう思うようになれば、自分もゲイであると疑われてしまうのではないかと恐れます。

同じ学校の教師、小山田貴文は、ひょんなことから娘がレズビアンであるかもしれないと疑いの目を持ちはじめていました。同性愛者にどう接すれば良いのかヒントを得るため、塚森に話を聞きたいと思うようになります。

塚森裕太のファンである内藤まゆは、塚森がゲイであるとカミングアウトしたのちも、これまで通りファンとして応援し続けようとします。

そしてバスケ部の後輩、武井進。彼は多くの生徒や大人たちが塚森に肯定的な意見を持つ中、塚森がゲイであることに抵抗感をおぼえます。変わりなく部活に取り組む同じ一年生の部員の言動も受け入れらず、ついに塚森に――。

本作品では、ゲイの当事者だけでなく、ゲイであるとカミングアウトをされた側の心の変化が丁寧に描かれています。

肯定的な人、嫌悪感を抱く人、カミングアウトの受け止め方は人それぞれです。

もし親しい人からカミングアウトされたら、自分はどうするだろうか。

そんなことを考えずにはいられませんでした。

最終章では、カミングアウトした本人である塚森裕太自身にスポットライトが当てられます。

頭が良くて、勉強ができて、スポーツが得意で、誰からも愛される塚森裕太。

だがそれは本当の自分ではない。では本当の自分はどこにいるのか。

自分自身を知りたいという欲求は、同性愛者に限らず誰にでも当てはまることでしょう。

だからこそ、周囲から求められている姿と本当の自分との乖離に違和感を抱き苦悩する塚森裕太の姿に、読んでいて胸がひりひりしました。

最後に

近年、同性愛の認知度は上がってきています。

YouTuberの中には、同性愛カップルの日常を載せている方もいますね。

広く人々に知られるにつれ、これまで見過ごされてきた問題がいくつも噴出してきています。

同性愛者カップルの結婚を認めるべきか。同性愛者が普通に暮らせる社会にどのようにしていくべきか。

性に関する問題は、簡単に答えが出せるものではありません。しかし、考えていかなければ問題です。そして問題解決には、知識が必要になってきます。

本書は青春小説としてだけではなく、LGBTQをはじめとした性的マイノリティをとりまく環境を知る一歩としても読める作品です。


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