前からずっと気になっていた『ミイラ展』。
なかなか足を運ぶ機会がなかったんですけど、今回、ようやく行くことができました。
ちなみに入場券は、アクセスチケット新宿店という金券ショップで購入しました。当日券で1,500円だったので、200円安くなってますね。
基本情報
開催概要
会期 | 2019年11月2日(土)〜2020年2月24日(月・休) |
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会場 | 国立科学博物館(東京・上野公園) 〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20 |
開館時間 | 午前9時〜午後5時(金曜・土曜は午後8時まで) 11月3日(日・祝)午後8時まで 11月4日(月・休)午後6時まで※入場は各閉館時刻の30分前まで |
休館日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日) および12月28日(土)〜1月1日(水・祝) ただし2月17日(月)は開館※開館時間や休館日等は変更になる場合があります。 |
入場料
入場料(税込) | 前売券 | 当日券 |
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一般・大学生 | 1,500円 | 1,700円 |
小・中・高校生 | 500円 | 600円 |
ミイラたちとの出会い
今回の展覧会の目玉は、なんといっても、様々な経歴を持つ43体のミイラが一堂に集まり展示されること。
ミイラというと、ずっとエジプトのイメージしかありませんでしたが、実は世界各国に存在するんですね。日本にも普通にいました。
43体もいれば、ミイラとなった背景も、その見た目もまるで違います。
自分がミイラに興味を持ったのは、小学生ときのことです。
映画『ハムナプトラ』を見たことがきっかけでした(その後、しばらくの間はエジプトが一番訪れてみたい国でした)。
きっと、あの恐ろしくも神秘的な世界観に引き込まれたのでしょうね。
館内は、四つの章にわかれています。
初めが「南北アメリカのミイラ」。次が皆さんおなじみの「古代エジプトのミイラ」。三番目が「ヨーロッパのミイラ」。そして最後が、日本を含む「オセアニアと東アジアのミイラ」です。
平日に行きましたが、意外と人は多かったです。
展示物の前に人だかりができており、ようやく間近でミイラを見れても、後ろでも待っている人がいるのであまりじっくりとは眺められませんでした。
ううん、見立てが甘かったな。
南北アメリカのミイラ~エジプトと双璧をなすアンデス山脈のミイラたち
ミイラの一大生産国ってずっとエジプトだと思っていたんですけど、案内板の表示を見るに、どうやらエジプトとアンデスが二大双璧となっているそうです、へえ~。
南米ペルー北部産地のチャチャポヤ文化のミイラは、手足を折り曲げられて布にぐるぐる巻きにされています。布の表面には、顔のような模様が描かれており、逆T字型に描かれた鼻がトレードマークとのこと。
見た目はぱっと見、かわいげがあります。しかし、その外見に騙されてはいけません。布の中にはおどろおどろしい人間のミイラが入っており、目にした瞬間、ドキッとすること間違いなしです。これが俗に言うギャップ萌え(違う)。
この地方では、いつまでも自分たちをそばで見守っていてね、という思いから亡くなった人間をミイラにして岩棚に安置していたそうです。想像上のものではなく、目に見える存在として先祖がそこにいるとなれば、悪いことなんてとてもじゃないけどできそうもありませんね。
ミイラを目にするのは、生まれて初めての経験でした。衝撃的で身体がぞわぞわとしましたね。いまはもう、彼らが動くことはないですが、遥か昔には自分たちと同じように生きてこの地球を歩いていたのだと思うと感慨深い。
驚いたのは、数千年も経っているのに髪の毛が頭部にまだ残っているということ。薄毛に悩んでいる現代人が知れば、なんで俺の髪は数十年ぽっちももたないんだと発狂するに違いありません。
ふと、漫画ONE PIECEに登場するブルックを思い出しました。骨だけになりながらもアフロだけ残っていた彼。あながちただのネタというわけでもなかったということでしょうか。ミイラも、毛根がよほど強かったのでしょう。
古代エジプトのミイラ~あつまれ どうぶつのミイラ
古代エジプトでは、魂がこの世に戻った際に、入るべき器を残しておくためにミイラ作りが盛んに行われていました。南米の先祖崇拝とは異なり、復活のための遺体の保存が目的だったというわけです。ベースになったのは、死後に復活を果たしたエジプトの神の一柱オシリスの神話とのこと。
ミイラにする際は、肉体から臓器を取り出し、カノポス壺と呼ばれる容器に入れていきます。ただし、心臓はそのままです。なんでも、死者の裁判で必要になるのだとか。真実の羽根と心臓を天秤にかけ、つり合いがとれると楽園に行けるそうです。カノポス壺は、「ジャッカル」「ヒヒ」「人」「ハヤブサ」のを象った蓋がされています。
おもしろかったのは、人間だけではなく、動物もミイラにされていたという点。
猫、ハヤブサ、トキ。
あの世で人間が食べるためだったり、ペットとして一緒に過ごすためだったり、けっこう人間本位の理由でミイラにされています。
猫は、愛の女神バステトと深く結びつけられて考えられており、人気だったそうです。猫のミイラのためのネクロポリス(墓地)もつくられたとか。猫は、いまも昔も変わらず人間たちの気を惹いていたんですね。やはり尊い。
ミイラを作る上で、見た目にもこだわりがあるようです。わざわざリネンで男性の生殖器を作ったり、右腕が欠けている子どものミイラにはわざわざ大人の腕の骨が入れられたり。自分の生殖器が死後も公の場でさらされるなんて、きっとその男性は生前、想像もしていなかったでしょう。秘密にしていたパソコンのデータを親に見られるよりも恥ずかしいに違いありません。想像しただけで身悶えしそうです。
ヨーロッパのミイラ~湿地帯で誕生した自然ミイラ
まず登場するのは、オランダの湿地帯から発見されたミイラ「ウェーリンゲメン」。当初は男女のカップルと思われていましたが、のちの調査で二人とも男性ということが判明しました。
人工的に造られたミイラと違い、こちらは自然にできたミイラです。
身体はぺらぺらになっており、保存状態は決してよいとは言えない外見でした。
湿地遺体の多くは、暴行を受けた跡があることから、処刑された、あるいは生贄として捧げられたものが多いそうです。
ヨーロッパのミイラの中で、なかなかユニークな展示品だったのが、「アンナの頭骨」と呼ばれるもの。
人間の頭部の骨に、花や植物の絵、その死者の名前などが描かれていました。いわゆる装飾が施されていました。
人骨と花の絵という奇妙な組み合わせのおかげで、背徳的というか、なんとも名状しがたい独特の雰囲気を放っていました。
魔女の住処に飾られていそうですね。
オセアニアと東アジアのミイラ~日本にもミイラは存在した
パプアニューギニアには、肖像頭蓋骨というものがあります。
亡くなった人の頭蓋骨をベースに、生前の顔つきを再現したものだとか。
目の部分にタカラガイを埋め込むなど、かなり奇抜な発想をしています。それにしても、なぜ貝……? 昔、貝は貨幣の役割を果たすほどの価値を持っていたこともありますが、そういったこととなにか関係があるのでしょうか。
ただこの肖像頭蓋骨、本物の骨が使われていたのは昔のこと。ヨーロッパ人たちがこの地に足を踏み入れた際、不気味だから、という理由で本物の頭蓋骨を使って作ることを禁止されてしまいます。その後は、頭蓋骨そっくりなものを代用して作ることになったそうです。
ちなみに、パプアニューギニアのアンガ族という部族は、いまでもミイラを作り続けているとのこと。その光景をおさめた映像を見ることができます。
最後はいよいよ日本のミイラです。
江戸時代の兄弟ミイラ、本草学者のミイラ、即身仏の計4体にお目にかかれました。
彼らがミイラとなった理由はこれまた個性的です。
「本草学者のミイラ」は、学問を追求するあまり最終的に自分もミイラになろうと思い立ったそうです。
彼が着目したのは、防腐効果を持つ柿。
「柿を食べればミイラになれるんじゃね?」と考えついた結果、彼は本当に実行してしまいます。
いや、普通やらないでしょ、と思わず突っ込みを入れてしまいました。ここまでくると、ちょっと危ない人のようにも思えます。
ちなみに、柿に含まれる防腐効果を持つ物質のことは、タンニンと呼びます。
ミイラ展の最後を飾るのは、即身仏「弘智法印 宥貞」。即身仏とは、穀断ちをし、瞑想を続け、原型を保ったままミイラになって悟りを開く(仏になる)ことを言います。槌の中でひたすら瞑想を続けるだなんて、想像しただけでも超過酷な修行です。やれ、と言われても早々できることではありません。
改めて見て見ると、日本人ってすごいですね。他人の手によってミイラとなるエジプトやアンデスとは違い、日本では他人の力を借りずに自力でミイラになっているんですから。どれだけ意思が強かったんだよ、という感じです。
ミイラ展を訪れて
ミイラと一口にいっても、実際は国ごとによってぜんぜん違うものだということがわかりました。
自然にできたミイラか、人工的に作られたミイラか。
先祖崇拝のために作られたのか、死者復活のために作られたのか。
ミイラとなる過程も、ミイラを作る理由も、地域によって千差万別です。文化や宗教、死生観の違いが、如実に表れていると言えるでしょう。なかなか興味深かったです。
近年、ミイラの研究のために、ミイラをCTスキャンするという試みが行われていることを知りました。古代の遺産と、現代の最新科学。あのトンネルのような機械をミイラ通過するシーンを映像で見ましたが、シュールでしたね。
とはいえ、そのおかげでミイラの構造をかなり詳しく知ることができたわけですから、科学の進歩というのはすごい。
展覧会の最後に、今回のミイラ展で活躍した人たちの名前が列挙されていたんですが、そこにあの『チーム・バチスタの栄光』の著者、海堂尊氏の名前がありました。思わず二度見してしまいました。まさかこんなところでお名前を見かけるとは……!
おまけ
海洋堂が本気を出したミイラガチャ
グッズ売り場では、ミイラ展のオリジナルフィギュアが手に入るガチャガチャがあります。
1回500円。
種類は全部で4つ。
- ネコのミイラ
- 若い女性ミイラ
- アンナの頭蓋骨
- ハヤブサの頭部が付いたカノポス壺
自分は2回まわしてみました。
結果、当たったのはどちらもネコのミイラ。
被った……。ネコはネコでもミイラだから、そこまでかわいいとも思えない……。
ミイラ展のあとは常設展へ
ミイラ展の入場券で、国立科学博物館の常設展も観てまわれます。
ミイラを拝んだあとは、生命の神秘に触れてから帰りました。
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